素敵なVisual Life
My Colorful Life
私の鮮やかな世界
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- 想い出をカタチに残すデザインで、注文殺到のバッグ・ショップオーナー
『Primavera』では、オーナー兼バッグ・デザイナーですが、
スタッフみなで一つの作品をつくりあげていく点はショーと同じ
時代が平成に入ってしばらくすると、ファッション・ショーの開催数自体が緩やかに減り始める。1998年からフリーランスとして活動する中、少しずつ時間にゆとりが生まれ、広里さんの“ものづくり”にかける情熱は、趣味だったバッグづくりへと注がれていった。
広里さん「私、本当は、ものをつくるのが好きだったので東京の美大に行きたかったんです。それが、親に反対されて、地元に残って……という経緯だったので、どこか消化不良なところがあったんでしょうね。それで仕事をしながら、ずっと趣味として自分でデザインしたバッグや洋服をつくっていました。
どこで教わったわけでもなく、中高の家庭科で習っただけなんですけどね。ただ、中高一貫の女子校でしたので、家庭科の授業内容がかなりしっかりしていたんだと思います。中学生くらいから、当時のバイブルとしての『装苑』を参考に、自分のワンピースやバッグをつくっていましたから。母や祖母も、編み物や洋裁が好きで、ものづくりの環境はあったのかもしれません。そういえば、小学校低学年の頃には、『バービー』人形のいとこの『フランシー』ちゃんに布とハサミとセロハンテープでおしゃれな服をつくってあげていましたね(笑)」
―― バッグづくりを仕事にしてしまおうと思われた、きっかけのようなものはあったのでしょうか。
広里さん「そうですね。自分でつくったバッグを持ち歩いていると、そのうちに友だちから“私も、そんなバッグをつくってほしい”とオーダーが入るようになりまして、その友人宅に行ってみると、さらにお客様を集めてくれていて……。そんなところから、自然な流れで注文が増えていきました」
そして、広里さんは、2003年8月8日、ついに『Primavera』を名古屋市千種区にオープンさせる。プリマベラとは、イタリア語で“春”のこと。色とりどりの花が咲きほこるがごとくバッグが並ぶ店内は、確かに春のような温もりと、始まりの季節を思わせる高揚感がある。
―― ついに、本職がバッグ・デザイナーになられたのですね。
広里さん「自分でもすごく不思議なんですけど、小学校の卒業文集に当時すでにグラフィック・デザイナーのようなものを夢みていたらしく、“自分のデザインした百貨店の紙袋をみんなに持ってもらえるといいな”なんてことを書いて、イラストまで添えているんですよ。将来、こうして本当にバッグのデザインを仕事にすることになるとは……」
オリジナル・バッグはもちろん、リメイクの注文も多い。『Primavera』のホームページのごあいさつ文には、
“広里友規子がデザインする作品は、様々な素材をミックスして、独自のハートフルな感性で表現されています。
旅先で見つけた趣のあるヴィンテージクロスやテープ、モチーフの数々。
レトロな洋裁店で出会ったデッドストックのボタンたち。
革工房で廃品となった工具用のカットレザー。
輸入毛糸屋さんの片隅にあった残り糸の小玉たち。
特殊印刷工場からの面白い素材の数々。
レース問屋さんからの段ボール箱にぎっしり詰まったレースサンプル。 etc.
これらの素材のひとつひとつがデザインの発想のきっかけとなり、プリマベラのオリジナル作品が生まれ続けているのです。”
とある。広里さんの素材に向けられた愛情と、それを手にしたときのどう蘇らせようかと思いめぐらせるわくわく感が伝わってくる一遍の詩のようだ。
―― “ものをつくる”のが本当にお好きなのですね。
広里さん「ファッション・ショーの魅力も、結局、つくりあげる楽しみだったんだと思います。様々な専門スタッフが集結して一つの作品をつくりあげていく演出の仕事が、今の仕事にも生きていると感じています。最初こそ、一人ではじめたバッグづくりでしたが、店を開くにあたって協力したいといってくれる人たちが、どんどん集まってきてくれたんですよ。最近は、デザインこそ私ですが、お客様のご要望をメールで細やかにヒアリングしてくれるスタッフ、実際にバッグをミシンで縫ってくれるスタッフと、たくさんの優秀な人材によって『Primavera』の作品、一つひとつが生まれているんです」
広里さんは、きっと持ち前の明るさで周囲の人々の灯台となり、人と人の想いをしっかりと繋いでいくHUB(ハブ)のような存在の方なのだろう。
―― 『Primavera』は、オンラインでも販売されているようですね。大きなバラのモチーフのバッグなど、広里さんご本人のお人柄にも似た、華やかかつ上品で温かみもあるような素敵な作品ですね。
広里さん「今、『Primavera』は、リメイクの仕事が中心になっているんですが、コロナ禍ということが逆に後押しになって、ありがたいことにリメイクの注文が全国から殺到しているんです。……ステイホームで、ご自宅の整理整頓をされた方が多かったんでしょうね。そうして、捨てるに忍びない想い出の品々が発見され、どうしたものかとリメイク先をインターネットで検索され、うちに辿り着かれているようなんです」
―― 演出家として、長年、デザイナーの世界観を大切にしながらショーをつくってきた広里さんだからこそ、お客様のご要望をしっかり反映した、“そうそう! こんなのが欲しかった”というようなリメイク作品がつくれているのでしょうね。
広里さん「確かに、そういう意味でも今に生きているのかしれませんね。先日も、お客様のお父様のネクタイでテディベアをつくってほしいというリクエストをお受けしました。ネクタイのままですと、娘さんはせいぜい大切に仕舞っておく以外にないわけですが、テディベアにすることで、目に入るところに飾って、いつでもお父様を偲べるわけですから。とても、やりがいのあるSDGsな仕事だと思っています」