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目に関するQ&A

Q:白内障手術を受けるタイミングはいつがベストなのでしょうか?

 手術は誰でも怖いものです。できれば避けたいという気持ちから先延ばしにする人もいるでしょう。しかし、適切な時期に手術を受けることが望ましいと思われます。では、適切な時期はいつかというと、「本人が日常生活で不便を感じるようになってきたとき」といえるでしょう。例えば、同じ程度の白内障でも、タクシーの運転手と仕事を 引退して自宅で過ごすことの多い人とでは、不都合を感じる度合いが異なります。タクシーの運転手は仕事ですから道路標識がはっきりと見えなかったり、車の横を自転車がすり抜けたのに気づけなかったとなると、事故につながるので非常に危険です。高齢者の交通事故が増えているのも社会現象としてご存じだと思います。0・7以上の視力があっても白内障が出ていると、運転時の動体視力は、0・2~0・3くらいに下がり、夕方や夜、雨の日などはさらに下がるのです。ヒヤッとした経験があるなど、切実に感じたときは手術を受ける時期といえます。これに対して多くの時間を自宅で過ごしている人は、手術の必要性を日常で感じることは少ないかもしれません。しかし、人間の五感のなかでも視機能の低下は、生活の質(QOL)に最も大きな影響を与えています。実際に、適切な時期に白内障手術を受けた人と放置した人とでは、転倒事故、外傷、認知症に陥る確率に大きな差が生じることが、多くの研究で実証されています。
なかでも2017年にアメリカで発表された研究報告によると、全米で転倒事故により病院に運ばれた高齢者のうち、打ちどころが悪くて死亡に至った人の数が、肺がんや前立腺がんで亡くなった人よりも多かったのです。
しかも、転倒した人の多くが、遠近両用メガネをかけていたことで、足下が見えづらくなっていました。このことから、片方だけでも白内障手術を受けていれば、死亡数は減ったのではないかと推測していました(※1)。また、白内障で視力不良の人は、視力良好な人と比べて認知症になるリスクが2・9倍高くなり(※2)、手術によって視力が良くなると認知症のリスクは大幅に下がる(※3)という報告もあります。
さらに、白内障が進行するほど身体活動性は低下し、結果として高血圧、動脈硬化、高脂血症、肥満などを引き起こし、脳血管障害のリスクが上がり(※4)、手術を受けることで睡眠時間や睡眠の質が改善して昼間の眠気がなくなるなど、多くの健康関連指数が上昇することも分かっています(※5)。
このように、早期の手術によるメリットとして、メガネから解放される(少なくとも遠くを見るためのメガネか老眼鏡のどちらか一方は必要なくなる)、身体が元気なうちに通院で治療を済ませてしまえることから健康寿命が延びる、そしてなにより豊かな老後生活につながるなどが挙げられます。その一方、白内障のタイプによっては、進行するほど手術の難易度が上がってくるケースがあります。そうなると手術に時間がかかって患者さんへの負担も大きくなり、術後の回復も遅くなります。また、手術中の合併症(第4章参照)につながることがあります。

このようなリスクを最小限に抑え、安全に手術を行う意味でも白内障を放置しないほうが賢明かと思われます。これらのことを総合的に考えて、私たち眼科専門医は最適な手術の時期を提案しています。
 

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