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目に関するQ&A

Q:10数年来、高血圧で薬を飲んでいますが、最近右目の下半分が急に見えにくくなりました。何が起こったのでしょうか。

A:おそらく網膜に通っている毛細血管の一部分が詰まってしまい、戻ってこられなくなった血液が網膜の上半分に浸みだしたものと思われます。この病気を網膜中心静脈(分枝)閉塞症と言います。

■血圧が高い時は血管にどのような変化が起きているのですか

血圧は、心臓が血液を送り出す時に血管壁にかかる圧力のことです。高血圧が持続されるとだんだん血管壁は硬くなり、血管は細くなりますが、その硬く細い血管に血液を通すためには、心臓はより収縮力を高め、さらに高出力で押し出さなくてはなりません。したがってますます高血圧になるという悪循環に陥ります。脳や心臓、腎臓などへの負担も大きく、脳出血や心筋梗塞など、命を左右するような病気を引き起こす原因の一つとなっています。

■高血圧があると目にどのような影響を及ぼしますか。

高血圧性網膜症が出現した人の眼底検査では、網膜血管の狭小化や動脈硬化症の変化が見られますが、血圧が体にどの程度の悪影響を及ぼしているかを直接観察できるという点で、内科的にも有用な検査と言えます。高血圧が持続し、絶えず高い圧に血管壁がさらされると、微小な破綻が起き、網膜に血液成分やコレステロールが漏れたりします。視力に一番大事な部分である眼底の中心部(黄斑部)に漏れると視力が低下することがあります。

■網膜中心静脈(分枝)閉塞症とは

高血圧に付随して起こりやすい目の病気に網膜中心静脈(分枝)閉塞症があります。これは網膜の動脈と静脈の交叉部など、静脈の還流が滞りやすいところに血栓ができて、静脈が詰まり、眼底出血を起こす病気です。静脈の流れは血栓によってせき止められますが、静脈血はどんどんやってくるので、河川の堤防が決壊するように、血管壁は破綻して、眼底出血となるわけです。網膜の中のどの静脈が詰まったかによって、出血の範囲や量が違うので、病状が完成した後の視機能は、患者さんにとって様々です。例えば幸いにも出血が黄斑部(網膜の中心部にあり、視力に一番大切な部分)を回避していれば、視力低下はあまりありませんが、出血の範囲に対応した部分が見えにくい、というような症状が出ます。黄斑部が腫れてしまった場合にはVEGF(血管内皮増殖因子)薬を投与します。
この症例では右目の網膜中心静脈分枝閉塞症で網膜の上半分に出血したものと思われます。また、運悪く黄斑部に出血が及び、障害を受けてしまうと、出血がひいた後でも明らかに視力が落ちてしまいます。出血が止まらず大量に出ると、眼球内にあふれてしまうこともありますし、かなり根元の方で詰まれば網膜全体に血液が流れません。その結果、新生血管が伸びて目の中の水(房水)の排出経路をふさいでしまい、重症な緑内障となり失明してしまうこともあります。糖尿病などと同じで、全身疾患が目に影響を及ぼす典型例の一つです。
 

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