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目に関するQ&A

Q:糖尿病網膜症の治療はどうしたらよいでしょうか。

A;まずは全身治療をしっかりすること。次に眼科的治療として、進行予防のためレーザーによる網膜光凝固術を行います。

■まずは糖尿病の内科的治療をしっかり行う
糖尿病網膜症の治療の前に、まず内科の治療をしっかりと受けてください。食事制限(糖の過剰摂取を控える)・運動療法(糖を消費する)・薬(血糖値を薬によって下げる)の3つをバランスよく行います。糖尿病網膜症は、長年の高血糖のツケが回って起きるので、「高くなく、低すぎない、安定した血糖値」がきちんと持続しないと、なかなか改善の兆しが出てきません。もともと真剣に治療に取り組んでこなかった人にとっては、血糖のコントロールそのものがかなり大変です。もし仮に血糖が安定しても、すぐに網膜症の改善には反映しないので、治療のモチベーションを保つのにも苦労します。まさしく、返しても返してもちっとも減らない「不良債権」のようであり、ここに網膜症の治療の難しさがあります。効果のないことをやれないのは人間の当然の心理だと思いますが、だからといって治療を先延ばしにしたら、ますます悪化することは皆さんにも容易に想像できると思います。

■目の治療の網膜光凝固とは
目の局所的な治療として、最も一般的なものに網膜光凝固術という治療があります。これは文字通り網膜をレーザー光線で焼く(凝固)治療です。「網膜を焼いても大丈夫なのだろうか」と思う人もいるかもしれませんが、網膜中心部と視神経以外は視力にはあまり影響しないので焼いても大丈夫です。なぜこの治療が有効なのかは、網膜症になる理由を思い出してください。網膜が栄養障害に陥るから新生血管ができますが、焼いて瘢痕になってしまえば栄養はいりません。よって新生血管の発生が予防できるのです。また、視力に影響しない部分を、あらかじめ焼いてしまう方法もあります。これは瘢痕だらけにすることで「悪化する可能性のある部分」をなくしてしまう、という理屈から考え出されました。この治療は視力を少しでも保つために、視力にはあまり大事でない部分を犠牲にする、という発想に基づいています。
糖尿病眼合併症の治療薬として近年の大きなトピックは、抗VEGF(血管内皮増殖因子を抑制させる)薬を患者さんに投与できるようになったことです。もともと抗VEGF薬は加齢黄斑変性の治療薬として導入された薬ですが、この薬は糖尿病網膜症を増悪させる新生血管の産生を抑え、血管成分の漏出を防ぐので、糖尿病眼合併症である網膜症の進行を抑制します。この抗VEGF薬が導入されて以降、患者さんの視力予後はとても改善しました。研究の結果、抗VEGF療法を受けた患者さんの視力は2年程度の経過をかけて段階的に徐々に改善していくことが判明しています。

■さらに網膜症が進行したらどうするか
しかし、網膜症が進行すると網膜光凝固だけでは改善しない可能性があります。眼球内の出血がちっともひかない場合や、すでに網膜剥離になっている場合などで、これらは手術療法の対象となります。増殖膜をはがし、出血を吸引し、剥離した網膜を元に戻します。この手術は硝子体切除術と言われます。ただし、この手術を受けたからといって、悪くなる前の視力に戻ることを期待してはいけません。視力の維持、悪化を防げれば成功と考えてください。したがって網膜症の治療に当たっては、予防・早期発見・早期治療がポイントになり、夢のような治療はないのです。


 

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