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目に関するQ&A

Q:白内障手術は入院しなくてもいいのでしょうか?

一度濁ってしまった水晶体を元に戻すことはできません。光の通り道を邪魔する濁りを手術で取り除くしかないのです。
けれども、水晶体は単なるガラス板ではなく、凸レンズの役目を果たしています。取るだけでは明るくはなっても、光を屈折させることはできないので、ピントが合わなくなります。ですから昔は、分厚いレンズの入ったメガネをかけたり、コンタクトレンズをつけてピントを合わせていたわけです。
ただ、メガネはとても度が強いものとなり、視野は狭く、周辺も歪んで見えるなど見え方の質が悪いうえに、外すと途端に見えなくなります。コンタクトレンズは、見え方の質は良いのですが、目の傷や感染などの問題もあるため、通院が必要です。
そこで登場したのが、水晶体の袋(嚢)の中に、「眼内レンズ」といわれる人工のレンズを入れる方法です。眼内レンズは1949年に誕生しました。国内で承認され保険適応になったのは1992年4月で、それまでは1枚 10万円くらいで自己負担でした。これが現在の「白内障手術」の始まりです。
 
現在、国内では年間190万件(2019年)の白内障手術が行われており、これはすべての外科手術のなかで最も多い部類に入ります。大学病院や総合病院だけではなく、街中にある眼科クリニックでも普通に行われている手術なのです。
 
このように今でこそ一般化し、術後は快適に過ごせるようになった白内障手術ですが、平成に入るまでは失明を防ぎ、濁りを取ることに懸命な時代でした。水晶体は直径9㎜ほどの大きさがありますので、これを取り出すには黒目の縁に沿って12㎜以上も(黒目の縁の3分の1から2分の1ほど)大きく切ったあと、水晶体の袋も含めてゴロッと丸ごと取り出していたのです。
これだけ大きく切開すれば当然、眼球内のほかの組織への負担も大きくなり、回復する までに時間もかかるため、傷がくっつくまでは安静を強いられていました。ですから当時の白内障手術は入院治療(片眼で1週間ほど)が当たり前で、視力が落ち着くまではメガネを作ることもできなかったのです。当時「メガネは最低3カ月経ってから作りましょう」といわれたほどでした。

その後は、検査機器や医療機器と医療技術の進歩によって安全で精度の高い手術が行われるようになりました。まず、丸ごと取り出していた水晶体を、水晶体の袋部分(水晶体嚢)を残し、濁った中身だけを取り除けるようになったのです。しかし、まだ傷口は大きく、術後乱視のコントロールも難題でした。

これは遠い昔の話ではなく、ほんの数年前のことです。これでは患者さんの望む「視覚の質」(QOV:クオリティ・オブ・ビジョン)には到底及びません。
その後、超音波で水晶体を粉々にして吸引できるようになりました。傷口は小さくなっていきましたが、眼内レンズが5㎜程度あり、糸で縫う必要がありました。
2000年くらいから柔らかい素材のレンズが普及し、折りたたんで小さな傷口から挿入できるようになりました。最近は、さらに小さく折りたため、超音波の金属の筒の大きさのたった2~2・4㎜の傷口からレンズも挿入できるので、従来よりも小さな傷口での手術が可能になり、縫合の必要がありません。術後、手術の傷口がどこにあるか分からないほどです。
 

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