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- 水先人・畑内康孝さん・豊富な知識で伊勢三河湾の安全を守る。
船長への助言者として海上の安全を守るプロフェッショナル
～海のパイロット「水先人」～
水先人
畑内 康孝さん
1954年11月10日生まれ 鹿児島県出身
船員として30年のキャリアを経て水先人に。伊勢湾・三河湾の豊富な知識で大型船の入港をサポートし、平成30年度には国土交通省の「海事関係局長表彰」を受賞している。
53歳で、船員から水先人へ。
30年越しの夢を叶え、憧れの仕事に就く。
―― 畑内さんが「水先人」になるまでの経緯を教えていただけますか？
畑内康孝さん（水先人）「鹿児島県で生まれ育ち、中学3年の夏休みに父親の仕事の都合で三重県に引っ越しました。中学を卒業し、一般の高校へ進学したのですが、親の勧めもあり高校2年のとき、東海地域でも有名な鳥羽商船高等専門学校へ編入したのです。当時の鳥羽商船は男子校で、質実剛健というかバンカラ気質の雰囲気でしたよ。学校生活は5年半で、最後の1年ほどは実習船で国内と海外の航路を体験しました。」
―― 鳥羽商船を卒業されて水先人になったのですね。
畑内さん「いえいえ、水先人というのは実はものすごい難関で、全国でもわずか625人しかいないんです。今は若い方でもなれるよう制度が変わりましたが、以前は船員になって十分な経験を積んでから一念発起して水先人に挑戦するのが普通でした。鳥羽商船の卒業生は、誰もが船員になれる訳ではなく、我々の頃から外国人船員との混乗船の時代となり、船員になること自体が困難になりました。」
―― そうだったのですね。それでは、畑内さんも卒業されて船員に？
畑内さん「私の時はちょうど就職不況。大手がほとんど採用しなくなってしまったので第一希望の願いは叶わず、第二希望のタンカー会社に就職しました。鳥羽商船に入ってすぐに出会った妻とは、卒業後すぐに結婚しました。当時から水先人への憧れがあったので『いつか水先人になりたい』と妻にもよく話していたものです。」
―― 念願の水先人になられたのはいつ頃だったのですか？
畑内さん「新卒で入社した会社で15年働いて船長になり、転職してさらに15年。船員として30年働いた後に、53歳で水先人になることができました。水先人になってから、ちょうど15年になります。」
―― 30年の船員キャリアの末に水先人になられたわけですが、船員との違いは感じましたか？
畑内さん「船員は航海に出ると、短くても1週間ほど、長い時には数ヶ月にわたって海上の人となります。その間はもちろん家族と会うことができません。一方で水先人は自宅から通えますので、“離家庭性”という点で大きく違いますね。船には乗りますが、水先人は船員とは違う特別な存在なんです。
現在、私は名古屋の住宅から水先人の仕事に通い、妻は京都の自宅で暮らしています。月に10日ほど一緒に過ごす感じですね。」
―― 船員時代を含め、奥さまとずっと一緒にいられない生活は寂しくありませんか？
畑内さん「別に寂しくはないですよ（笑） 夫婦の間にはある程度の距離感が必要です。お互いちょっと離れて自由な時間があって、そこそこのお金があるのが理想ですね。そういった意味では理想のライフスタイルを叶えていると思いますよ。」
